第五十話
「暫定」

 一宮管制の管制室はお通夜ムードになっていた。誰も、何も言わない。何か言ったら止めをさしてしまいそうな。いや、もうささっているような。そんな感じである。

  藤前 ふじまえ が抜け殻になっていた。
「考えられる限りでベストな展開だった」
 香取が呟くと、 艦橋 かんばし 名鳥 なとり が歯を見せて怒った。威嚇すんなと自分も歯を見せてうなった後、香取は腕を組んで身体を傾けた。安くはないが長年使っている椅子なので、身を預けると妙な音がする。噂によるとこの部屋の椅子の中には昭和時代の椅子もあるとか。

 香取は頭をかいた。
 プライベートの通信環境だってないんだから、仕方ないだろうが。
 まあ、いや、とはいうものの実際あのハママツさんの泣きそうな笑顔を見てしまうと、まあ。なんだ。藤前はともかく気の毒ではある。

 どうにもならないんだがな。

 身も蓋もない事を考えて、香取は笑顔で、すべての問題を上司に投げることにした。つまり岩井に投げた。
 電話をとり、岩井に直電する。
「藤前が振られて抜け殻になっています」
「残念だった」
 ちっとも残念でないように、電話先の岩井は言う。ひでえ人だなと思ったが、まあ、他に言いようがないのも分かる。ですよねー。
「ついては有給でもやろうかと思うんですが」
「そこはもう少し考えようか。彼の覚悟次第だ」
 覚悟ねえ。
「皆が見てる中で告白しただけじゃダメですか」
「まだ足りないな。それじゃあ大事なものをやるには足らない」
 有給は大事か。いやまあ、有休取りにくい会社だからそりゃ大事か。
「分かりました。覚悟については考えてみますよ」
「方法も考えないとな」
「なんですか、それは」
「義勇社員掲示板を見てみようか」
 何を言っているのかよく分からない。
 香取は片方の眉をあげて考えた後、手元の専用端末で義勇社員掲示板を見た。

義勇社員掲示板を見る