第四十九話
「赤面」

 最初からそう言えば良かったのよ。
 腕を組んでハママツはそう言った。
 そう書くと偉そうだが、表情は赤面し横を向いての話だったので、偉そうというより、すねているように見えた。

 反応は、ない。

 おそらくフジマエは死にそうな顔をしているのであろう。
 ハママツは顔を赤くして楽器を鳴らしながら、トヨタやオカザキから目を逸らした。照れ隠し。
 なんで死にそうなのかは分からないけれど、フジマエが突っ伏しているのは見えずとも分かった。
”やってしまった……”
 あげく、予想から一歩も離れていない事を言っている。
「もー、何言ってるのよ。いいじゃない。好きだとか、愛しているとか」
”あー! あー!”
「何してるの」
”必要な社会的措置だ”
「喧嘩する気?」
”周りに聞こえないようにしたい”
「隠さなきゃいけないの?」
”それは……ちが、う、けど”
「よーし、歌にあわせて言ってみよう」
”やめて!”
 以上のやりとりで、ハママツは上機嫌である。相手がフジマエとはいえ、好きだとか言われると、とても嬉しい。いや、フジマエだからかな。分からない。
 まあ、幸せだ。 
 噛みしめて、ため息。
「よし、満足した。私、領主と結婚するね」
”こらー!”
「あんたがそんなこと言っても、怖くもなんともないんだからね」
”いや、そういうんではなく、いや、お前、僕にあんな事まで言わせておいて!”
 フジマエ暴れているんだろうなあ。なんだか笑ってしまった。
「だから満足したんじゃない。もういいわ。私の恋は終わり、どうせ手もつなげないしね。だからいいんだ。あんたも自由でいいわよ。そっちの世界でいい人見つかるといいね。あ、でも私にそんな話したらダメよ。あと私が結婚するところとか見ないで」
”だ、だれが……”
「泣いてるの?」
”泣いてない!”
 泣いてるし。まあでも、気づかないふりをしてあげるべきかな。
 髪をかきあげる。
「うん。それがいいわ。私だって泣かない。あんたに好きだって言われたからね。だからそれ持って、死ぬまで笑ってるわ。私に幸せになってほしかったんでしょ。願いかなったじゃない。良かったね」
”いいわけあるか……なんだよ、なんでだよ”
「仕方ないでしょ。政略結婚なんだし」
”反対だ!”
「できれば故郷が平和に統一されてほしいの。そしてそれを願うなら、この話は悪くないと思う。ほら、玉の輿にものれるしね。私、ついてる」
 ハママツは優しく優しく言った。好きな男に。
「あんたの作る道路で、私、いつか故郷に帰ってみたいな。いい考えって思わない? そう思うなら、毎日真面目に働くこと。あと、泣かない」
”僕はいつも真面目だ”
「そういうことにしといてあげる。はいはい。あんたが年上なんだから、しっかりやりなさい」
 私の顔を見えているだろうか。ハママツはそう思った後、顔をあげた。
「好きだよ。フジマエ」