第五話
「失意」

NEOPASA ネオパーサ 駿河湾沼津

 翌日、駿河湾沼津にくるとモニターの向こうの風景に大きなお姉さん、身長にして4、5mくらいのお姉さんが続々道端に座ってこっちを見ていた。いずれも一部が植物化していて、典型的な大地巨人、半巨人であるのが分かった。
「なんかお祭りでもあるんですか」
 うっかり尋ねたら、いつも話をする大虎のお姉さんが樽で酒を飲みながら言った。
「いや、ここに来たら笑えるという噂が立って」
 そりゃあんだけ大きな声で笑い転げれば、こっちどころか向こうでも大問題だよなあと、 石清水 いわしみず は納得である。
「ということで、続き見せて?」
「見せられるか!」
 目を剥いて言ったら、後ろの方でお姉さんたちが爆笑した。音圧でこちら側が吹き飛びそうになる。もう、駄目だ。また始末書だよ。
「あれ、なんで横になってるの」
「これは悲しみのポーズです」
 必死に耐えていた大地巨人まで笑いだした。
 騒ぎに駆け付けた警備員に、石清水は連れていかれた。爆笑で白い布で作った囲みが飛んだ。

 泣きながら石清水が電話で部長の岩井に報告すると、岩井は面白がった。
「それ、向こうの風景見せるよりずっと面白い気がするね。中継とかしちゃう?」
「僕もう帰ってもいいですか」
「何言ってるんだ。仕事じゃないんだから真面目にやれ」
「僕は仕事に来てるんです……」
  NEFCO ネフコ を作ってもう何年も経っているのにドワンゴ系の社員は相変わらずであった。
 深く長いため息をついて石清水は現場に戻った。
 すごい人だかりだった。

 大型モニターの向こうでは大きなお姉さんたちが酔ったまま腕組んで10人ほどで踊っており、高く上げられた脚は中々の美しさというより大迫力だった。
 対してパン屋のお姉さんたち10人ほどが並んで腕組んで踊り返している。
「こんなところで、平日の午前中から何やってるんだよ!!」
 今回ばかりは石清水が正しいことを言ってる気がしたが、皆は何言ってんだこいつという顔で線の細そうな石清水の顔を見た。
「異世界と交流してんだけど」
 モニターの向こうで大虎のお姉さんがそんなことを言った。こっち側の人たちも頷いている。

 岩井のどや顔を見ることになるかもしれないと思った瞬間、石清水の目の前が暗くなった。糸が切れたように倒れ、動かなくなる。

 遠くなる意識の底で、爆笑する声が聞こえた。意識の底というか、ここは失意の底だ。ああ、尊敬する芸人さんが言っていた。笑われてはいかん。笑わせるのだと。ええ、そうでした。
 大学卒業して数年、自分が関西人であることをどうにか隠しおおせて東京砂漠で生きてきましたが、ついに自分を解放、いやここ駿河湾沼津だ……もうだめだ。

 ついに動かなくなった石清水、立て、石清水。お前が良識を口にしなければNEFCOはどうなる。立て、立つんだ石清水、お願いだから……。

 次回へ続く